がん・難病・その他の障害

障害年金の「その他」の疾病に関しては、がんや難病などが対象疾病です。
傷病名にかかわらず、日常の状態が

1級

症状のため「寝たきりの状態」の方

2級

症状のため「ベッド周りでの生活」の方

3級

症状のため「生活および就労に著しい制限がかかっている」の方

が対象となります。
生活状況や周りの援助などでも基準が変わりますので、ご自身が年金の対象か気になる方はご連絡ください。

この項目では以下の3つに分けて順番にご説明します。

  • (1)がん
  • (2)難病・その他傷病
  • (3) 認定が困難な疾患の認定事例

がん

まず、がんについてご紹介します。

  • 1級:著しい衰弱又は障害のため「寝たきりの状態」の方
  • 2級: 衰弱又は障害のため、「ベッド周りでの生活」の方
  • 3級: 著しい全身倦怠のため、「生活および就労に著しい制限がかかっている」方

が障害年金に該当します。

2014年から2015年に全国のがん拠点病院などでがんと診断された94万人あまりのデータについての「5年生存率」(2023公表)、2011年に全国のがん拠点病院などでがんと診断された36万人あまりのデータについての「10年生存率」(2024公表)についてご紹介します。

これら国立がん研究センターの調査では「実測生存率」の他に、がんが原因で亡くなった人だけを推定して算出する「ネット・サバイバル」と呼ばれる値が用いられています。

5年生存率について、全体の実測で60.3%、ネット・サバイバルで66.2%と発表されています。また、手術あり症例56万件では生存率が上がり、実測が76.8%、ネット・サバイバルが83.7%となっていますが、手術なし症例37万件だとそれぞれ40%以下でした。

続いて10年生存率について、全体の実測で46.0%、ネット・サバイバルで53.5%と発表されています。

また、経過年数ごとの生存率についてのデータもまとめられて、大腸がんなど一部のがんでは全ステージで「5年から10年までの相対生存率」が横ばいになっていました。
このデータも含めて、診断から年数が経過して生存している方(サバイバー)の、その後の生存率を示す「サバイバー生存率」については長期生存するほどその先の生存率は上昇していくことがわかりました。

大腸がん

早期では自覚症状はほとんどなく、進行すると症状が現われます。血便、便が細い、便が残る感じ、おなかが張る、腹痛、貧血、体重減少などです。

最も頻度が高い血便、下血などの症状をそのままにしておくと、がんが進行してから見つかることがあります。
40歳代から増加し始め、50歳代で加速され、高齢になるほど高くなります。

乳がん

11人に1人の日本人女性が乳がんにかかるといわれています。
女性の乳がんのかかる率が年々増えていて、30歳から増加し始め、40歳代から60歳代にかけて最も高くなっています。乳がんが見つかるきっかけとしては、検診を受けて疑いを指摘される場合や、自分で身体の異変に気付く場合などがあります。

肺がん

40代後半から、肺がんにかかる率が増え始め、年齢が高くなるに従い高くなります。
男性が女性よりも高くなっています。喫煙が肺がんに罹患するリスクを高めています。

前立腺がん

55歳以降に前立腺がんにかかる率が増加します。前立腺がんの初期は特有な症状はなく、その多くは前立腺肥大症に伴う症状です。
進行すると骨に転移しやすいといわれています。

難病・その他傷病

続いて、障害年金の対象となる難病やその他傷病についてご紹介します。

群発頭痛

群発頭痛とは、脳卒中など頭痛を引き起こす病気がないにもかかわらず慢性的な頭痛を繰り返す“一次性頭痛”の1つです。発症すると数週間~数か月にわたって、片方の目の周囲から前頭部や側頭部にかけて激烈な痛みが発作的に生じ、日常生活に大きな支障をもたらすのが特徴です。

クローン病

クローン病は消化管(大腸や小腸、口腔内等)に慢性的な炎症(潰瘍、ただれ等)を生じる疾病で潰瘍性大腸炎と並び難病に指定されている代表的な炎症性腸疾患と言われています。症状として腹痛、下痢、発熱、下血、体重の減少、全身倦怠、腸管の合併症(狭窄、膿瘍等)、肛門部に病変(痔瘻(じろう)、肛門周囲脳腫等)が生じる合併症などがあり、回復期と悪化、再発を繰り返す特徴があります。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎は免疫の異常によって大腸の粘膜に炎症が起こる病気です。主な症状は腹痛・下痢・血便・関節痛・皮膚の変化などになり、原因は自身の白血球が大腸の粘膜を攻撃してしまうことによる免疫の異常です。主に大腸に炎症が起こるため、クローン病とは違い、口や肛門にまで広がることは少ない特徴があります。

人工肛門

人工肛門(ストーマ)とは、肛門から排便ができなくなったときに、人工的にお腹に作る排泄口のことです。お腹に穴を開けて自分の腸とつなぎ合わせ、便を出します。出てきた便は、人工肛門に取り付けた袋(パウチ)に収めることになります。
人工肛門の方は原則として障害年金3級に認められます。

認定が困難な疾患の認定事例

以下の4つの疾病については、「認定が困難な疾患の認定事例」として、日本年金機構が傷病毎に受給事例を出しています。

  • 化学物質過敏症
  • 繊維筋痛症
  • 脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)
  • 慢性疲労症候群

それぞれの症状と各級数に該当する症状についてご紹介します。
また、下記の症状の状態と合致しない場合でも、現在の症状を総合的に判断して級数が決まるため、疑問などございましたらお問い合わせください。

化学物質過敏症

神経に影響する化学物質に大量あるいは低濃度でも長期に触れることで、自律神経失調やアレルギー症状に似た身体反応を生じる症状。症状によって日常生活や就労にどのような制限がかかっているかで、年金に該当するかが決まる。

1級

生活環境内の化学物質によって、動けなくなるほどの筋肉痛や脱力感、頭痛、易疲労、嘔吐、下痢、呼吸困難、動悸、視力低下、湿疹などの多様な症状が出現するため、「日常生活は全介助の状態」

2級

血液・生化学検査にて異常はないが、動けなくなるほどの頭痛、めまい、動悸、吐き気、倦怠感、のどや眼の痛みなどの症状が化学物質により容易に誘発、増悪した、「日常生活に著しい支障が生じ、就労は全くできない状態」

3級

洗剤、シャンプー、香水、芳香剤など日常にありふれた臭気でめまい、視覚異常、嘔吐、脱力、集中力低下、うつ状態などの症状があり、週のうち数日自宅にて安静が必要になるため、「ほとんど外出することができない状態」

繊維筋痛症

明らかな異常がみられないにもかかわらず、全身や体の一部に強い痛みが生じる病気です。
厚生労働省の「重症度分類試案」により、「ステージⅠ~Ⅴ」の5段階の評価をされています。Ⅰが最も軽症でⅤが最も重症であり、これまでの受給事例より、Ⅱ~Ⅲが3級相当、Ⅲ~Ⅳが2級相当、Ⅴで1級相当となるケースが多く、肢体の診断書で症状を評価されます。

1級

全身の激しい痛みが酷く、食事、排泄など日常生活動作のすべてにおいて介助が必要となっており、常時車椅子を使用している状態

2級

激しい痛みが持続しているため、日常生活動作のほとんどが一人でできてもやや不自由な場合、又は一人でできるが非常に不自由な状態

3級

腰臀部、両側肩甲帯部、一下肢に激しい痛みが出現しており、日常生活動作のほとんどが一人でできてもやや不自由な状態

脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)

外傷を受けることで脳脊髄を覆っている膜に傷がついたり破れたりして、脳脊髄液が漏れ出したり、それにより髄液圧が低下したりすることで起こる病気です。
一般的な症状に頭痛、頸の痛み、めまい、倦怠感、不眠、記憶障害などがあります。
身体的な症状があるかどうかによって、使用する診断書が「肢体の障害用」と「その他の障害用」と異なりますが、どちらも検査結果や症状による日常生活への制限、日中に横になっている時間などが判断基準となっています。

1級(肢体)

閉眼での起立・立位保持が不可能であり、開眼での直線10m歩行が困難である。また、全身の痛みが酷く心身共に疲弊しており、日常生活動作が一人で全くできない、又は一人でできるが非常に不自由な状態で、ほとんど介助を要する状態となっており、日中の大半を臥床して過ごしている。

(その他)

脳脊髄液の漏出が認められたため、ブラッドパッチを行ったものの、起立性の頭痛をはじめとした症状が残っている。日常生活活動能力が歩行困難というだけでなく、食事や排せつも他人の介助がないと困難な状態となっており、ほぼ終日就床して過ごしている。

2級(肢体)

閉眼での起立・立位保持が不可能であり、開眼での直線10m歩行が困難である。また、頭痛やめまいをはじめとする多様な症状のため、日常生活動作が一人でできてもやや不自由、又は一人でできるが非常に不自由な状態であり、外出も困難で労働能力はない。

(その他)

脳脊髄液の漏出が認められたため、ブラッドパッチ等を行ったものの、症状が改善せず、起立時の頭痛をはじめとする症状が残存した状態。家事を行うのが難しく、一人で外出できずに買い物が困難な状態である。また、日中の50%以上は就床している状態である。

3級(肢体)

日常生活動作にそれほど支障はないが、閉眼での起立・立位保持が不安定で開眼での直線10m歩行に支障があり、平衡機能に障害がみられる。また、頭痛や上背部痛などの多様な症状のため、日常生活動作の大半が一人でできてもやや不自由な状態であり、労働能力が大幅に低下している。

(その他)

脳脊髄液の漏出が認められたため、ブラッドパッチ等を行ったが、症状の改善が若干にとどまっており、起立性頭痛等の症状が残存した状態になっている。 これらの症状により、日中の50%以上は起居しているものの、労働の内容や時間の制約を受けている。

慢性疲労症候群

突然原因不明の強い疲労感が始まり、生活に支障をきたしてしまう病気です。
障害年金の請求において、旧厚生省研究班の重症度分類PS(パフォーマンス・ステータス)のいずれに該当しているかを医師が診断書に記載する必要があります。

PS0

倦怠感がなく平常の社会(学校)生活ができ、制限を受けることなく行動できる。

PS1

通常の社会(学校)生活ができ、労働(勉強)も可能であるが、疲労感を感ずるときがしばしばある。

PS2

通常の社会(学校)生活ができ、労働(勉強)も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である。

PS3

全身倦怠感のため、月に数日は社会(学校)生活や労働(勉強)ができず、自宅にて休養が必要である。

PS4

全倦怠感のため、週に数日は社会(学校)生活や労働(勉強)ができず、自宅にて休養が必要である。

PS5

通常の社会(学校)生活や労働(勉強)は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。

PS6

調子のよい日には軽作業は可能であるが週のうち50%以上は自宅にて休息が必要である。

PS7

身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会(学校)生活や軽労働(勉強)は不可能である。

PS8

身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。

PS9

身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

1級

休職し治療に専念していても、高度の全身倦怠感、易疲労、 軽微な労作でも著しく遷延化する疲労感、咽頭痛などの症状が強く続いており 終日臥床状態となっている状態。
一般状態区分は「身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの」となっている。また、平成3年(平成7年一部改変)旧厚生省研究班の重症度分類では、PS9に相当する。

2級

治療を行っても、高度の全身倦怠感や微熱、筋肉痛などの症状が続いており、日中の大半は横になっていることが多い状態。
一般状態区分は「身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの」となっている。
また、平成3年(平成7年一部改変)旧厚生省研究班の重症度分類では、PS8に相当する。

3級

治療を行っても、激しい疲労感、記憶力低下、脱力、微熱、頚部リンパ節の腫大などの症状が続き、軽作業は可能であるが、週に数日は休息が必要とされる状態。
一般状態区分は「歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの」となっている。また、平成3年(平成7年一部改変)旧厚生省研究班の重症度分類では、PS5に相当する

自身が障害年金に該当するか気になる方や、障害年金の申請について悩みや疑問がある方は問い合わせください。

障害年金の対象となる傷病・障害等級

障害年金の対象となる主な傷病
ぶどう膜炎、緑内障(ベーチェット病によるものも含む)、白内障、眼球萎縮、網膜脈絡膜萎縮、網膜色素変性症、眼球萎縮、網膜剥離、腎性網膜症、糖尿病網膜症など
聴覚、平衡機能感音性難聴、突発性難聴、神経性難聴、メニエール病、頭部外傷又は音響外傷による内耳障害、薬物中毒による内耳障害など
鼻腔・口腔 言語外傷性鼻科疾患、上顎癌、上顎腫瘍、咽頭腫瘍、咽頭全摘出手術、 失語症、脳血栓(言語)など
肢体の疾患事故によるケガ(人口骨頭など)、人工関節、変形性肢関節症、肺髄性小児麻痺、脳性麻痺脊柱の脱臼骨折、脳軟化症、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、脳血管障害、上肢または下肢の切断障害、重症筋無力症、上肢または下肢の外傷性運動障害、 関節リウマチ、ビュルガー病、進行性筋ジストロフィー、脊髄損傷、パーキンソン病、強直性脊髄炎、脊髄の器質障害、ポストポリオ症候群、繊維筋痛症など
精神疾患うつ病、双極性障害、統合失調症、てんかん、知的障害、発達障害、アスペルガー症候群、高次脳機能障害、アルツハイマーなど
呼吸器疾患気管支喘息、慢性気管支炎、肺結核、じん肺、膿胸、肺線維症、肺気腫、呼吸不全など
循環器疾患心筋梗塞、心筋症、冠状僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、先天性疾患など
腎疾患慢性腎炎、慢性腎不全、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、人工透析など
肝疾患肝炎、肝硬変、肝がんなど
糖尿病糖尿病(難治性含む)、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、など糖尿病性と明示された全ての合併症など
血液再生不良性貧血、溶血性貧血、血小板減少性紫斑病、凝固因子欠乏症、白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、HIV感染症など
その他人工肛門、人工膀胱、尿路変更、クローン病、潰瘍性大腸炎、化学物質過敏症、白血病、周期性好中球減少症、HIV、乳癌・胃癌・子宮頸癌・膀胱癌・直腸癌等のがん全般、悪性新生物、脳髄膜液減少症、悪性高血圧、その他難病など

この他にも障害年金の対象となる傷病はあります。ご不明な場合は、お気軽にお問い合わせください。 

障害年金受給事例

精神疾患の受給事例

精神疾患の受給事例

・うつ病・てんかん
・躁うつ病
・統合失調症
・精神遅滞・発達障害
・高次脳機能障害など

肢体障害の受給事例

肢体障害の受給事例

・脳出血・脳梗塞
・パーキンソン病
・多発性硬化症
・脊髄損傷
・股関節症など

内臓・難病の受給事例

内臓・難病の受給事例

・人工透析
・肝硬変
・クローン病
・糖尿病
・慢性疲労症候群など

心疾患・眼・耳の受給事例

心疾患・眼・耳の受給事例

・心疾患
・視力障害
・視野障害
・難聴
・言語障害など